特別報告 上原公子(うえはらひろこ)国立市長
                              2006.8.5 平和と民主主義をめざす全国交歓会開会集会(京都)

 皆様こんにちは。ただ今ご紹介いただきました東京にあります国立市長の上原と申します。よろしくお願いいたします。

 自治体の首長をしてますとね、大変こう辛い思いをすることが多いんです。出てくる出てくる問題、それから議会での発言が、今までだったら絶対言えないような非常に危ない発言が平気で言われるようになりました。それから平和っていうのが非常に危うくなることっていうのは、実はヒットラーみたいな非常に強いリーダーがトップダウンで戦争をするっていうふうな仕掛けでは絶対来ないっていうことですね。国立だけではなく全国の状況を見ててわかります。戦争への道は民主主義と言う非常に私たちが今目指しているものを使って静かに静かに忍び寄って来るんです。ですからこそ私たちはその民主主義という手続きを持って平和という世界の実現を目指していきたいというふうに思っております。その一つが今全国で広がっている、国際人道法・ジュネーブ条約追加議定書を使って無防備地域宣言を全国に作っていこうという運動です。分科会の中で詳しくその報告があると思いますので私からは若干そのヒントということをご報告させていただければと思っております。私に与えられた時間は15分ですので短くなりますけれどもよろしくお願いいたします。

 大阪から始まりましたこの無防備地域宣言を今各自治体にということは、これは日本国憲法がもちろん平和に貫かれた戦争放棄、非戦の国であることを明確にした憲法であることは間違いないことなんですけれども、政府が2004年、2年前に戦争法を全部作ってしまいました。2002年に有事3法ができ、そして2004年に残念ながら関連の10法案が全部通ったところで、日本は戦争が出来る法的な手続き、民主主義による法的な手続きがすべて整ったわけです。しかし引き換えに、国は戦争の出来る国にしたために、ジュネーブ条約の追加議定書第1第2を批准しなければならないという状況に置かれました。私も含めて無防備地域宣言を知ってる人たちは、それを使っていこうということなんです。私も勉強会に参加させていただきながら、なるほどこれはすごい、使えるな、ということで国立においても、その運動をした人たちが直接請求という形で条例を作ってほしいという提案運動があったわけです。この直接請求、全国で残念ながらまだ制定されたところはありませんけれども、2つの効果があったと思います。
 一つは大阪で始まった時もそうでした。直接請求とは大変大きな、重い請求運動ですから、有権者、選挙権を持っている人たちの署名、それから捺印、これがなければ請求権が発生しないわけです。法定数を超えなければ発効しません。それは選挙でみんなが一票を投じるのと同じ力を持っております。大阪でも最初の心配を大きく跳ね返しての署名、法定数をはるかに上回る署名が集まりました。国立でもそうでした。法定数の3.7倍以上。これは国立で言えば議員が7人くらい出せるんです。ものすごい力です。しかもですね、この直接請求ですごかったのは、普通そういう時っていうのは組織を使うんですが、国立の場合6割がなんと街頭署名でやったんです。私はこれまで3度直接請求を経験しているんですけれども、街頭署名で、はんこまでもらうということは相当理解をしてもらわなければ実は署名はもらえないです。それは、街角に立って、一人ひとりに話し掛けて、理解をしてもらう運動が一挙に一か月間という署名期間に広まったということです。感動いたしました。私の娘がおりますが、娘にも集めてね、と頼んであちこち電話したんですが、ほとんどが、いや、もう街頭でしちゃったよ、って言うんですね。町じゅうにひそかに、ひそかに。それこそ毎日毎日雨の日も風の日も、署名活動の人たちが立っておりました。その姿を見るだけですごいなと思いましたけれども、集めた数のすごさに本当に感動いたしました。それは、地域の中で実は不安に思ってた人たち、今こんな状況でいいのかな、何をしようか、その手立てのなかった人たちが一筆書くことによって、自分が賛同して行動することができた。その署名活動を通して平和という自分の意志をアピールすることができた。そのチャンスを実は町の中で作ることが出来る。これが一つ、大変大きな効果です。その次には、もっとそれを使って運動をやろうという意思が町じゅうにあふれていくということです。しかも今度国立市で署名活動をした人たちは、それまで組織をされてない、ほとんどそういったものに表に出てこなかった人たちが中心になりました。新たな市民自治の活動が始まったというふうに思っております。

 それからもう一つの効果、これは大きいと思います。私はこれまで平和ということを中心に、平和的生存権、これが平和憲法の中心なわけですけれども、それを自治体の中でどういう風にきちんと実行していくかということを一番中心に据えてまいりました。その中で、有事法制が提案された時にこれはもちろん自治権の侵害でもあるし、ある意味で国民統制法につながっていくという危機感を持って、政府に対して何度も何度も質問書を提出をいたしました。その結果として、有事法制廃案の意見書を出したわけです。
 その一番危機感を持った国民統制につながるこの法律が実は、国民保護法でした。これに基づいて計画を作らなければいけないんですが、皆さんの住んでらっしゃる各都道府県でももう国民保護法に基づく保護計画というものが出来ました。戦争法っていうのは戦争になって初めて発効されるんですが、この国民保護法だけは平時から平和な時から実は発効できるということで国民統制につながる一つの道具として使われております。計画をつくり、計画に基づく訓練が毎年毎年行われます。お気づきのように各自治体で、都道府県レベルで、それから市町村共同で国民保護計画に基づく訓練というものが始まりました。その中で堂々と自衛隊が参加をする、これが当然のように行われております。果ては米軍まで共同で、その保護法訓練をするということが始まっております。町じゅうに平時の時からいわゆる戦争のための軍隊が堂々と闊歩するような時代に入ったわけです。
 それに危機感を持った私は1年半をかけまして、法律の専門家の皆さん、自治体の職員の皆さんと一緒に研究会を作りましてこういう本、「国民保護計画が発動される日」という本でございますが作りました。今年の3月に出しておりますので是非これは皆さんの教科書としてお使いいただければと思いますが、この中で、実はジュネーブ条約を、この条例請求にあたって色々アドバイスをいただいたり勉強いたしますと、実はジュネーブ条約違反が、どうもこの国民保護法のみならず日本政府が出した法律の中にあるんではないかという疑惑が出てきたわけなんです。おそらく有事法を作った時にジュネーブ条約の追加議定書第1第2を批准したわけですが、意識をしてなかったのではないかと思われるふしがあちこちに見られます。
 明確なのは、皆さん見てくださいね、国民保護法第15条に、都道府県知事は自衛隊の派遣を要請することが出来るっていう文章があるんです。これはおそらく災害の時、救助に自衛隊がどんどん出て行ってますからいつも画面で見てますので、あ、当然だ、そこを突かれてるんです。突かれてるのか、気が付かなかったのかわかりませんけれども、実は国際法上自衛隊イコール軍隊ですからね、戦争の時には標的になるから絶対住民市民のそばにいてはいけないんです。そのことを知らずか意図的に知ってか、要請をして誘導、避難の誘導をすることができるということになっているんです。法律上避難の誘導とは書いてありませんが、政府が作った解説書に、そのためには活用できると。だからその自衛隊を呼んで欲しいということで訓練に大いに自衛隊が全部投入されているわけですよ。これは絶対にジュネーブ条約の国際人道法違反ですから。そのことを皆さん、広めていただきたいんです。

 それからとても重要なことは、この条例の、皆さんが広めている条例の中にありますけれども、ジュネーブ条約の追加議定書の第59条に基づく4つの要件を満たすということがあるんですが、それは軍事施設、つまり米軍施設はもちろんのこと、自衛隊にかんする施設が全国非常にたくさんあります、日本には。何ヶ所あるのかちょっとわかりませんけれど、それはいけないんですね。いけなかったんです。これは国際人道法の中にちゃんと、軍事目標は、要するに文民から分離をしなさいというのが原則なんです。軍事物、人も含めて施設も市民も一緒のところにいては戦争の時は攻撃の対象になりますから市民が巻き込まれてしまう。市民を巻き込まないための法律がジュネーブ条約ですから完全分離をしなさい、そういうふうに書いてあります。それが実は日本の中を見てみると、国立もそうですけれども自衛隊の関連施設があります。すぐ、わずかですけれども。その周辺に学校だとか病院だとかそれから幼稚園、それから住宅はもちろんですが密集しております。いざの場合は、今、北朝鮮の色んなミサイル攻撃のお話が出てきて非常にリアリティをもってきました。だからこそ、このジュネーブ条約追加議定書に批准をしたんだから、分離をしなさいっていうことは運動になります。これはすごく、これからの運動に大きな力になると思います。まずは、国民保護計画の中で自衛隊を参加させて訓練は絶対させてはいけないこと。それから地域の中にある施設を点検してください。軍事用の施設、自衛隊を含む軍事用の施設の周辺に住民に関わる色んな施設、民間の住宅があった、これは一緒にしてはいけないということですから追い出してください。これは自治体の責務でもありますし、もちろん国の責務でもあります。自治体が自治権を発揮してそのことを政府に要求することができるということになったわけです。

 無防備地域宣言の運動がこのことを明確にしてくれました。大変すばらしい運動だと思います。分科会でそのことの報告があると思います。今日、私も会場でこの新聞をいただきましたが、鮮明に国立のその様子が出ております。そのことも書いております。国立で3日間議会がありまして、私のほうはもちろん賛成意見書を書きましたけれども、賛成の与党の議員の皆さん、それから請求代表者の皆さんと議論をいたしまして、これまで各自治体で反対という立場で行政が言ってきた根拠を、全部私が覆す、法的根拠を持って覆すということを議会の中でやり取りをいたしました。議事録ができましたらそれを使って全国の運動に是非役立てていただければと思っております。国立は少数の与党のために残念ながら否決をされてしまいましたけれども、請求運動をされた皆さん方のすごいパワフルなパワーが地域の中に広がったということと、その理論的根拠を持って議会の中ですべて覆して自治体でこの条例が非常に有効であるっていう、そしてそれを政府に要求することが、ジュネーブ条約を使って要求することができるという大きな目標が出来たということで国立の役割、少しは果たせたかなと思います。どうも皆さん、それを役立てていただければと思います。今日は本当にありがとうございました。


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