市民自治シンポジウム(「無防備平和」出版記念会)開催
         生命守る琉球の魂の総意として無防備条例を制定させよう! 
  
    無防備地域宣言・沖縄ネットワーク事務局長 西岡信之  09年33号2〜3面
  2月28日(土)午後7時から那覇市内で、「憲法9条を地域から実現させる市民自治シンポジウム」を高文研刊行の「無防備平和」出版記念会として開催しました。札幌から市民の会共同代表で著者の谷百合子さんを沖縄に無防備運動としては、初めてお招きし、たくさんの元気をいただくことが出来ました。
 
   基地のまち札幌の運動に納得

沖縄では、無防備運動の連続学習会や平和力講座などを何度も開催してきましたが、実際に自衛隊基地のある札幌市で無防備運動を取り組まれた谷さんのお話は具体的で説得力があり、参加者の表情を見ていても無防備運動への受け止め方が今までとは違うという印象を強く感じました。
 シンポの報告と10月の那覇市の署名運動に向けた現状をお伝えします。市民自治シンポジウムは、当初札幌市民の会の共同代表で自治体政策研究所理事長の森啓さんを記念講演の講師としてお呼びしシンポジウムにつなげる予定でしたが、あいにく森さんが風邪で来られなくなり、急きょ全国ネットワーク事務局の中川哲也さんに来ていただき、パネリストの一人になっていただきました。講演時間を省略し、シンポジウムの時間を十分とる運営に変えることにしました。

   軍民分離を証左した映像

 開会前のプレ企画として、06年6月23日に放映されたニュース23の「慰霊の日」の沖縄特集として無防備運動を取り上げた番組のビデオを上映しました。沖縄では、去る2月24日にキャスターだった筑紫哲也さんのお別れ会コンサートが那覇市であったばかりでした。番組の内容は、慶良間諸島の前島の話をはじめとして、住民が日本軍と行動を共にしなかった場合は、被害が激減するという「軍民分離の原則」を沖縄戦の史実から幾例も証左するものでした。

    山内徳信さんが報告

 沖縄ネットワークの呼びかけ人を代表して参議院議員の山内徳信さんも来場され挨拶をいただきました。山内さんは、最近の国会外交防衛委員会などでの政府側答弁のでたらめさを紹介され、政府側委員や官僚に対しては、徹底的に厳しく対応しなければ彼らは何も反省していないと普段の怒りをふつふつと思い起こすような国会報告となりました。

   無防備運動やって良かった

 シンポジウムでは、谷さんから「無防備運動に取り組むかどうか悩んでいたら、直ぐに取り組むように言う」という持論を展開され、「無防備やってて、よかった」と経験豊富な楽しい元気の出るお話を次に次に披露。そして札幌市では平和予算が1千万円も計上されたこと、元「慰安婦」問題決議が議会で可決されたことなど、「平和をめぐる取り組みが明らかに前進している」と話されました。

    海勢頭さんが「琉球の魂の総意」「何より勇気必要」と
                    那覇の無防備運動の開始を宣言


 またパネリストには、音楽家で沖縄ネットワークの呼びかけ人の一人でもある海勢頭(うみせど)豊さんにもなっていただきました。海勢頭さんは、琉球新報に書かれた「無防備平和」の書評を紹介されました。
 書き出しは、「沖縄に軍隊はいらない。軍隊は住民を守らない。日米両軍が沖縄で戦い、沖縄は不幸になった。軍隊のために今も沖縄は不幸のままだ。」という沖縄戦での軍隊に対する厳しい批判から始まり、無防備運動については、「まずは首都那覇市で無防備地域宣言運動を起こし、無防備平和条例の制定を全国に先駆けて行いたい。そこで首里城下の那覇市議会と市民は、県民市民の生命を守る琉球の魂の総意として、本条例制定に向けて取り組んでほしい」「条例についての勉強と理解と、何より勇気が必要である」とまとめられ、那覇市の無防備運動の実質的な開始宣言というべきものとなりました。特に「何より勇気が必要」というところに、参加者の多くから共感が得られました。
 全国ネットの中川さんからは、無防備運動に取り組まれた全国26自治体での取り組みから、現状の到達点や課題などが報告されました。とりわけ各市町村での議会対策として、請求代表者が議会で意見陳述とは別に参考人として発言する機会を獲得し、無防備運動が国際法の下で住民を戦争被害から保護できるという意義があることを論点に議会審議できるかどうかが重要であり、何としても条例化を実現させていきたいと抱負を語られました。
 
   着々進む準備

 那覇市の無防備運動について、現在の状況は、請求代表者には沖縄国際大学教授の石原昌家さん、前県議会議員の狩俣信子さんのお二人が確定し、元那覇市議会副議長の高里鈴代さんと元琉球大学教授で副知事を務められた比嘉幹郎さんまで交渉中の段階となっています。関係者と話す中で、詩人や陶芸家など文化人の方やキリスト教関係者にも早急に話に行くことが課題となっています。
 
   「十・十空襲」の日から署名スタートを予定

 署名運動の開始時期については、10月10日を予定しています。この日は、沖縄戦開戦の前年1944年の10月10日、那覇市は米軍の空襲によって壊滅的打撃を受けました。後に「10・10空襲」と呼ばれ、現在でもこの日には慰霊祭が市内各地で取り行われています。那覇市は、日本軍の司令部があったのをはじめ、県都として政治経済の中心であるとともに、那覇軍港や弾薬庫など軍事都市でもありました。署名運動は、二度と那覇市が戦争の被害にあうことがないよう、軍隊につながることはすべて拒否していくことを呼びかけていくためにもこの日にしたいと考えています。いよいよ、那覇市での無防備運動スタートです。
            恒久派兵法への露払い ソマリア沖海自派兵
                    海賊対策新法に反対しよう!
 
                      全国ネットワーク事務局 09年33号   4〜5面             
       
     海上警備行動」に基づくソマリア沖海自派遣は脱法行為
 
 麻生内閣は、ソマリア沖海賊対策と称して海上自衛隊をソマリア沖に派遣する方針を決定した。1月28日、浜田防衛相は海自に派遣準備指示を出した。そして、これに基づき海自、海保は既に共同訓練を開始した(海自は単独の訓練も実施している)。 
 今回、海自をソマリア沖に派遣する根拠法は、自衛隊法82条=「海上警備行動」である。海賊対策新法を制定するまでの“つなぎ”として持ち出されたものだ。しかし、この規定に基づいて「海上警備行動」が発令されたのは、過去に2回しかない。1999年の「能登沖不審船」事案と、2004年の「沖縄近海、中国原潜領海侵犯」事案。いずれも領海侵犯など「国土主権」の侵害防止ということで発令されたものであり(地理的な限定)、行動権限もあくまで警察作用の範囲内のものであった(政府はそのように説明していた)。
 ところがソマリア沖は、日本から1万キロメートル以上離れている。「海上警備行動」発令の前提となっていた「地理的限定(領海ないし排他的経済水域)」を全く無視したかたちで海自はソマリア沖に派遣されようとしている。これは違法だ。百歩譲っても脱法行為と言わざるを得ず、許されない。

     海賊対策新法は恒久派兵法の露払い
 
しかし、政府は何が何でもソマリア沖に海自を派兵しようとしている。何故か?
 それは、第1に自衛隊の海外派兵・展開をどんな理由をつけてでも継続したいからである。
 イラク派兵は終了し、テロ特措法に基づくインド洋派兵も先細りは必至である。他方、アフガン本土への自衛隊派兵は戦闘が激化し、ISAF、米軍の兵士の死亡が相次ぐ中では簡単には踏み切れない。そのような中で、ソマリア沖海賊対策に名を借りて自衛隊を海外に派兵したいのである。
 第2の理由は、とりあえず「海上警備行動」で派遣しておいて、最終的には海賊対策新法を制定して海賊対策を自衛隊の“新任務”としたいからである。
 政府が3月上旬にも国会に提出しようとしている海賊対策新法のポイントは以下のとおりである。
(1)先ず、特別措置法(期間限定)ではなく一般法であり、派遣する地域もソマリア沖に限定しない→海賊対策名目であればいつでもどこへでも派遣できるという法である、
(2)海賊から警護する対象船舶も日本関係船舶に限定せず全ての船舶に拡大する→他国の船を守るという名目で他国軍艦船と共同作戦も展開しうる(集団的自衛権行使へのステップ)、
(3)武器使用基準について警察官職務執行法7条を準用しつつ、正当防衛・緊急避難該当いがいに危害射撃(逃亡する海賊船への船体射撃、等)も可能とする→武器使用基準緩和の大きな一歩とする。
 また、重要なことはこの海賊対策新法を日本独自の判断で制定しようとしていることである。国連安保理はソマリア沖海賊に関しては、各国に取締り権限を付与する決議を採択しているが、それはどこの海賊にでも適用できるものではない。自公政権は、国連決議とは関係なく海賊対策を行う法を作ろうとしているのである。
 
とりあえずは海賊対策限定であるが、国益、「国際平和維持」のために、自衛隊をいつでもどこへでも派兵し、敵対するものに対しては他国軍と共同して、反撃・攻撃することを可能にしようという法律、それが海賊対策新法だ。海賊対策新法は明らかに自公政権が制定を狙っている恒久派兵法へのステップとなる法なのである。海賊対策という反対しづらい理由を掲げて海自をソマリア沖に派遣する裏にこのような狙いがあることを今こそ徹底して暴露していくことが必要である。

      ソマリア沖海賊対策は違う方法で
 
 海賊は組織的犯罪であり、それは取り締まらなければならない。ソマリア沖の海賊も、人は殺してはいないが(誤って殺した際は謝罪している)、人質をとって身代金を取ることをビジネスとしている以上犯罪集団である。しかし、ソマリアの海賊の多くは元漁民であり、沿岸警備隊員であるという。
 彼らが海賊行為に手を染めた背景に、ソマリア中央政府の崩壊とそれによる国内経済、治安体制の崩壊等がある。そこを突いて、欧米、アジア諸国の漁船がソマリア沿岸で違法操業を行って水産資源を略奪し、また放射性廃棄物等の不法投棄を行って自然環境を破壊してきた(環境保護団体グリーンピースの指摘)。それに対して元漁民や沿岸警備隊員らが「迷惑料」を取り立て、「課徴金」を課すという名目で海賊行為を働いているという“事情”がある。盗人にも三分の理と言う。ソマリアの政府機能の再建と民生の安定、また外国漁船・船舶による違法行為の一掃等に国際社会が連携して協力・支援しなくては海賊をなくすことはできない。
 
     海賊対策での実績無視し派兵に固執する政府

 また、海賊の取締り、摘発については既にアジアでは「アジア海賊対策地域協力協定」(RECAAP)が採択され(04年)、
(1)情報共有センター(ISC)設立、
(2)ISCを通じた情報共有及び協力体制(容疑者、被害者及び被害船舶の発見、容疑者の逮捕、容疑船舶の拿捕、被害者の救助等の要請等)の構築、
(3) ISCを経由しない締約国同士の二国間協力の促進(犯罪人引渡し及び法律上の相互援助の円滑化、並びに能力の開発等)などを進めた。これによりマラッカ海峡(かつては「海賊銀座」と呼ばれていた!)の海賊被害は大幅に減少した(03年の発生件数:170件→08年9月現在:41件)。このRECAAPを提唱・主導したのは日本であった。マラッカ海峡は、「日本の生命線」と言われていた。ソマリア沖などとは比較にならないほど重要な海路・シーレーンであった。その地域で頻発する海賊に対し、日本は海自出動などを声高に叫ぶのではなく、地域諸国間の協力態勢づくりを提唱し、実効ある枠組み=RECAAPを作り出した。また、東南アジア各国の海上警備隊職員の研修、インドネシアへの最新の巡視艇(3隻)供与など、域内諸国の海賊対策能力強化を支援してきた。日本は海賊対策でこのような「実績」を持っているのである。ところが、ソマリアではその経験を活かそうとするのではなく、自衛艦派遣に固執する。何と異常なことか。
既に、国際海事機構(IMO)は、1.26〜29にジブチで「ソマリア周辺海域海賊対策地域会合」を開催し、海賊対策のための「行動指針」を採択した。それはRECAAPのソマリア版を形成しようというものである。海賊対策には海自出動、軍事対応ではない有効な対策がある。海自派兵にはあくまで反対していかねばならない。 
   【資料】  寝屋川市議会 山本三郎議員(社会民主党)
   2008年12月22日 本会議 賛成討論(抜粋)
     09年33号6〜7面         
  ※字数の関係上抜粋しています。ご容赦下さい。小見出しは全国ネット事務局によります。

    地域の市民保護をなし得るのは自治体政府のみ

 本条例は、有権者の50分の1を上回る7274筆の署名でもって住民直接請求として市長に提出されました。これだけ多くの寝屋川市民が国際平和と憲法の平和主義の理念・実現のために、憲法9条の掲げる戦争放棄と非戦平和のまちづくりに向けて不断の努力を求めた条例に賛同され、直接請求されたことに改めて敬意を表したいと思います。
(略)また、自治体が無防備地域の宣言主体である適当な当局に該当する根拠として、松下圭一法政大学名誉教授(政治学)は、有事立法を検討するなら、市民保護のための包括的な国際準則である議定書から出発するべきであると指摘した上で、適当な当局に自治体が含まれる理由として、1.自治体は自衛権の主体たる個々の市民の信託を受けた地方政府としているはずだからであり、有事の際、中央政府は遠くにあり、戦禍にさらされている地域の特殊な状況は掌握し得ない。その地域の市民保護をなし得るのは自治体政府のみであるという点を挙げている。したがって有事の際は寝屋川市でもできると解釈され、いざ有事という時に備えて、平時から条件整備に努めるためにも条例制定が必要不可欠であると考えます。
 私も寝屋川9条の会や寝屋川団地、三井団地9条の会の呼び掛け人の一人として9条を守る運動に参加していますが、今回の寝屋川市平和無防備都市条例制定直接請求署名運動の賛同人にもなっているのであります。今回の直接請求にかかわる条例案についての市長の意見書では、いわゆる武力攻撃事態対処法など法令との抵触を理由にして反対されていることは誠に残念なことです。(略)

   武力攻撃事態対処法や国民保護法にも違反しない

 市長の意見書では、第2条第2項は、寝屋川市に居住する人は、その意に反して軍事活動を目的とした権利の制約や財産権の侵害を受けることはない旨を規定。しかし、いわゆる武力攻撃事態対処法は、武力攻撃事態等への対処においては、自由と権利に必要最小限の制限が加えられることを規定しており、この点は同法に抵触をすると反対の理由にしていますが、この条項は武力攻撃事態対処法第3条にあり、その第1項では、武力攻撃事態等への対処においては、国、地方公共団体及び指定公共機関が国民の協力を得つつ相互に連携協力し、万全の措置が講じられなければならないと、本来、強制ではない国民の協力が挙げられている。
 その中で国民の権利制限は国会も激論になり、2003年5月の審議において、不十分ではあるが、武力攻撃事態対処法第3条第4項、武力攻撃事態等への対処においては、日本国憲法の保障する国民の自由と権利が尊重されねばならず、これに制限が加えられる場合にあっても、その制限は当該武力攻撃事態等に対処するため必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われねばならない。この場合において日本国憲法第14条、第18条、第19条、第21条、その他の基本的人権に関する規定は最大限に尊重されねばならないが追加修正された。この条文は制限する場合でも最大限尊重と極めて慎重な表現であって、軽々しく権利制限を認めたものではない。
 国民保護法に基づく寝屋川市国民保護計画では、5.国民の協力、国民の保護措置等の実施のため必要があると認めるときは、国民保護法の規定により国民に対し必要な援助について協力を要請する。この場合において国民の協力はその自発的な意思にゆだねられるものであって、その要請に当たって強制にわたることがあってはならないことに留意すると、国民の協力は意に反しての強制ではないと明記しているのである。条例案はこれらのことを平和生存権の確保と併せ具体的に示したものである。
 武力攻撃事態法第5条は、当該地方公共団体の地域並びに当該地方公共団体の住民の生命、身体及び財産を保護する使命を有することにかんがみ、国及び他の地方公共団体、その他の機関と相互に協力し、武力攻撃事態等への対処に関し必要な措置を実施する責務を有すると規定している。この規定に寝屋川市平和無防備都市条例は何ら違反しない。
 第5条は、自治体が住民を保護する使命を有していると認めた上で、武力攻撃事態等への対処に関し必要な措置を実施する責務を有すると規定しているが、そこには無防備地域4条件を満たす地域づくりを進めること。万々が一の事態において無防備地域を宣言することを排除する規定はない。国及び地方公共団体、その他の機関と相互に協力することが規定されているが、それはあくまで住民保護のためであり、仮に軍事への協力が求められているとしても、それはジュネーヴ諸条約第一追加議定書文民保護規定に違反しない限りにおいてである。以上のことから平和無防備都市条例が地方自治法第14条1項に違反することはない。
 さらに付言するなれば、同法第7条は、事態等に対処するに当たって自治体は住民保護のために国の方針に基づく措置を行うとともに、その他適切な役割を担うと規定している。自治体が独自に平和無防備都市条例を制定し、その規定に沿う事務を行うことは同法に違反しないのである。

 国民保護法について言えば、同法9条2項は、国民の保護のための措置を実施するに当たっては、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施を確保しなければならないと定めている。この国際人道法がジュネーヴ4条約、追加議定書等を指すことは明白であり、国民保護法はあくまでジュネーヴ条約追加議定書に違反しない限りにおいて有効であり、その範囲内で運用されるべきことを国民保護法自体が認めているのである。
 また、同法第35条で、国民保護計画の策定を規定し、その第2項で計画を定める事項を列記しているが、その6では、前各号に掲げるもののほか、当該市町村の区域に係る国民の保護のための措置に関し、市町村長が必要な事項を挙げている。これの意味するところは、武力攻撃事態法第7条とも関連し、各自治体がその判断に基づき、国民の保護のために独自の措置を講ずること。裁量を認めたものということである。したがって、平和無防備都市条例が国民保護法に違反するということもなく、地方自治法14条1項にも違反しない。

   戦禍を免れた沖縄・前島の無防備地域の実例
 ここで沖縄戦の教訓の制度化としての無防備地域について述べたいと思います。軍事優先の沖縄戦において、住民を守る観点から住民が現地の軍に主体的に働き掛け、戦禍を免れたこの事例、実質的な避難地区を設定した事例はなかったのであろうか。その事例として無防備地域の宣言主体に関する国会論戦で引用された渡嘉敷村前島がある。周辺の島々が間断なく陸海空から攻撃を加えられる中、たった1か所前島だけが砲弾を浴びることなく真空地帯のまま残された。
 これは上海事変で陸軍上等兵だった比嘉儀清分校長(当時)が軍人時代の体験を踏まえて、兵がいなければ相手方の兵隊は加害しないという信念に基づき、住民を守るために前島に駐屯しようとする鈴木常良第3基地隊長に対して命懸けで撤退交渉を実施したからである。
 この交渉過程において比嘉分校長は、鈴木隊長が疑う反戦思想からではなく、太平洋各地では住民も玉砕しているなどの純軍事的な事例を踏まえ、軍がいない方が住民は害を加えられないで生き残ると論じたのである。軍事優先の時代であって双方最初のうちはいきり立ったが、鈴木隊長は、「分かった。では君がいかなることがあっても前島の全責任を持て。いかなることでもやるか。住民の1人も殺してはならないぞ」と迫ったのに対し、比嘉分校長は、「決死の覚悟で何でもやる」と答えた。
 それから比嘉分校長は、青年学校の教官、防衛隊長、竹やり訓練の執行責任者に就任し、鈴木隊長は住民を動員して陣地構築をしていた前島の駐屯部隊およそ100人の撤退を決断したのである。そして昭和20年3月下旬か4月初め、米兵5人が上陸し、軍用犬を連れて島中を調べた。その翌日、約150人の米兵が上陸、日本兵や軍事施設がないことを確認して去った。米兵は島を去るとき、船上から住民にスピーカーで、この島には一切の攻撃を加えないし、捕虜も取らないと放送したのである。
 この結果から比嘉分校長の信念は的中したのだが、前島に日本兵や軍事施設がないという条件を守るために、近隣の沖縄本島や渡嘉敷、座間味を渡る日本兵の前島経由では前島の北にある小無人島の拝島などに兵隊をかくまった。その際、食事もやぎ汁など険しい崖を登って運ぶなど、当然日本軍に協力したが、穏便にお引取りを願うことがもっと大切だと考えたのである。この前島の教訓をいかして、制度化することによって平時より避難地域が準備でき、さらにその避難地域を拡大することは、ひとつの軍縮に向けた日常的な努力になるからである。それを有事に機能させることによって、今後、玉砕する軍の道連れになった嘉屋武半島の避難民に類する悲劇から免れることができるのである。

   平和的生存権を条例において具体的権利として定めることは、
                   市民の平和と安全を守る自治体の責務

 住民の福祉の増進を図るために地域的な性格を有する行政を自主的かつ総合的に実施するという役割を担っている自治体が、ジュネーヴ諸条約第一追加議定書第59条、無防備地域の宣言をすることは意義のあることであります。
 憲法の平和的生存権は単なる理念ではない。2008年4月17日名古屋高裁は、平和的生存権はすべての基本的人権の基礎にあって、その享有を可能ならしめる基底的権利であるということができ、単に憲法の基本的精神や理念を表明したにとどまるものではない。平和的生存権は具体的権利性があると判示したように、条例において具体的権利として定めることは、市民の平和と安全を守る自治体の責務である。
 今日、政府の戦争推進政策で国民の平和的生存権が脅かされており、それに対して異議申立てする具体的権利として判例が確定された状況にあって、これを不要とすることは市民の平和的生存権を保障しようとしないことを意味する。
 第4条第1項は、戦争に関する一切の事務を本市が行なわないと規定しておりますが、戦争の放棄は憲法に明記しているとの意見ですが、憲法に明記しているからこそ、その具体化を地域で図ることが必要なのである。戦争の放棄はいわば枠法であり、具体的規定はしていない。自治体において当該市民に憲法を守り、戦争に協力しないことを保障するために自治体を拘束する条例で規定することは極めて重要です。国の法律が改正されても、その枠法だけでは当該自治体の事務ができないため、当該自治体の条例をそれに合わせて改正するのと同様で、憲法を守る立場であれば当然です。
 また、地方自治体がその条例等において、国防、外交にかかわる事項を扱いながら、政府から違法性を指摘されたこともなく、逆に国際的に通用している例が存在する。藤沢市の非核平和条例、核兵器を市内に持ち込むことを拒否することを規定している。神奈川県の大和市自治基本条例第29条は、市及び市議会が厚木基地移転の実現に努める旨を規定し、また条例ではないが、神戸市は、非核証明を提出しない艦船については神戸港への入港を認めないという非核神戸方式を採用している。政府は、藤沢市、大和市の条例について違法であると指摘したことはない。非核神戸方式は、外国の軍艦船も受け入れている。例えばフランス、インド等の軍艦船、非核証明書を提出することによって入港を認められた。国際的にも立派に通用しているのである。
 さらに、前岩国市長の井原勝介氏は、米空母艦載機の厚木基地から岩国への移駐に、政府の国防政策に従わず、住民投票で賛否を問いました。井原前市長は、住民自治での合意を日米軍事同盟の国防政策に優先したのです。いずれも国と対等の地方分権を主張する首長です。住民投票も含めた住民合意があれば、無防備地域宣言も可能です。

 最後に、今まで寝屋川市が平和と人権に前向きに取り組んできたことは一定の評価をするものですが、戦争体験のある市民もだんだん高齢化して数少なくなっていくばかりです。戦争体験の語り部や記録を残すための資料づくり等の予算を組むなど、更なる御努力をお願いして、本条例の賛成の討論といたします。以上です。