ガザへの攻撃は虐殺だ イスラエル・米国の
            国際人道法違反=戦争犯罪は許されない
                            全国ネット事務局 12年65号2面        
    
   ガザ攻撃は国際法違反

 11月14日のイスラエルによるガザ地区住民への攻撃は、21日午後9時(日本時間22日午前4時)に停戦が発効しました。
 この攻撃は、イスラエル軍によるハマス幹部の暗殺に始まり8日間に及びました。
前回2008年末から翌年1月にかけてイスラエルが地上軍を投入して1,400名の犠牲者を出した侵攻を繰り返すことは回避したが、最初の3日間で950回の空爆が行われる熾烈なもので、この攻撃による犠牲者は154人(11/22時事)に達し(イスラエル側は5人)、負傷者は1,400人に上っています。うち、子どもが三分の一を占め、66%が民間人と言われています。

 また、この攻撃はイスラエル軍は予備役に召集をかけて地上戦の準備をするなど、イスラエルによって周到に準備されたものであり、「ハマスのロケット攻撃に対する報復」というのは口実にすぎないのです。

 今回のイスラエルの軍事行動は、紛争下における文民保護を定めたジュネーブ条約、国際人道法に完全に違反する戦争犯罪そのものです。私たちは、イスラエルの戦争犯罪を断固として糾弾するとともに同時にこの犯罪行為を無条件に支持した米国を糾弾するものです。

   周到に準備された攻撃~対抗手段持たない民衆の虐殺

 今回のガザ攻撃の理由としてイスラエルは、ハマスによるイスラエルへのロケット弾攻撃に原因があるとしています。
 しかし、この攻撃は「中東の春」以降、これまでイスラエルの占領政策に対して黙認してきた環境が変化し、孤立化していることに対してのイスラエルによる武力による現状打開と、来年1月のイスラエル総選挙を前にしたネタニヤフ政権の国内支持拡大にあります。 
このことは、米の支持をとりつけるため米大統領選後、就任式前に行われた事とあわせて、すでに多くの識者が指摘しているところです。

 もちろんハマスのロケット弾攻撃が正当とは言えません。しかし、その背景として、60年以上に渡って行われてきた軍事占領政策、土地の収奪・追放・殺害、その上に立っての自治区への入植、壁の建設等があるのは事実です。  
 また、イスラエル軍も認めているとおり、ハマスのロケット弾は実態は極めて命中精度の低い手製ロケット弾に近いものと言われています。

 これと150万の人口密集地に対してF16戦闘機から撃ち込む対地ミサイルやロケット弾のイスラエル軍の軍事行動は「報復」の域をはるかに超えています。ガザ地区にもたらしている悲惨な実態、イスラエル側の被害との圧倒的な非対称性を見るならば、イスラエルの言い分は全くの口実でしかないことは明白です。

 さらに14日にミサイル攻撃で暗殺されたハマス幹部(司令官)は、暗殺される数週間前にイスラエル側から恒久和平の提案書を受け取り、和平交渉に入るところだったという情報もあります。事実とすれば、イスラエル政権内部でハマスと恒久的に停戦しようとする和平派の動きが、この暗殺で阻止され今回の戦端を開いたということになります。いずれにせよ、米国の支持を受けたイスラエルが周到に準備した攻撃―戦争であったことは間違いありません。

   法の支配による恒久夕平和を

 圧倒的な軍事力で対抗手段をもたない民衆を虐殺する、こんな軍事行動は犯罪でしかなく認められません。
 私たちは、軍事的手段ではなくあくまで平和的方法による紛争の解決を求めます。法の支配による恒久平和の実現を求めます。
 私たちはイスラエル=米国の国際人道法無視、破壊を許すわけにはいきません。
  【大飯停止 オスプレイ配備反対】
 地域から平和をつくりだす!十二月議会でさらに自治体決議を!
                             全国ネット事務局  12年65号3面    
 
 この秋、大飯原発停止を求める決議やオスプレイ配備反対決議を自治体議会で採択させることを取り組んできた。
 のべ20近くの自治体議会でとりくみ、大飯原発停止では神奈川県藤沢市議会で、オスプレイ配備反対では、東京都立川市議会、神奈川県藤沢市議会、大阪府吹田市議会で採択された。
 不採択となった議会でも、自民党など保守会派で意見分岐が起きるなど「原発止めろ」「オスプイ反対」などの国民世論が押している状況だ。原子力規制委員会の大飯の現地調査結果は、現行の「安全審査の手引き」の「断層運動が原因であることが否定できない場合は活断層を適切に想定すること」に照らすと、活断層であることは明白である。

 自治体の使命は、市民の命と財産を守ることにある。この使命を実現するため「自分たちの地域のことは自分で決める」という自治を徹底させ、その政策に市民の声を反映させていくことが必要である。12月議会で採択を迫ろう!

   【各地の決議 資料】

 米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの
         普天間飛行場配備に関する意見書(抜粋)
  平成24年9月26日 吹田市議会

…米空軍のオスプレイは、2ヶ月あまりで2度も墜落しており、最も危険な欠陥機であることは明らかである。政府及び防衛大臣は、市街地に大きな影響は与えないとオスプレイの安全性を強調するばかりであり、沖縄県民を始めとする国民の生命と人権を無視したこうした対応は到底容認できない。
 沖縄県内にオスプレイを配備し、一方的に押しつけようとする日米両政府のやり方は、戦後67年も米軍基地の過重負担に苦しんでいる沖縄県民の負担軽減どころか県民が強く望んでいる一日も早い危険性の除去に逆行するものである。…オスプレイ配備に対する沖縄県民をはじめとした住民の意思は明確である。地方自治の本旨は住民意思を実現であり、外交や安全保障も、本質は国民の幸福を実現することにあり、この根本にあるのは住民の意思にほかならない。住民意思の尊重抜きにして地方自治の発展と住民の幸福を実現することが難しいことは明らかである。
よ って、本市議会は政府及び国会に対し、米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場配備に関して、沖縄県議会、那覇市議会を始めとする自治体議会意見書及び全国知事会緊急決議を尊重するよう強く要望する。


 米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの
         普天間飛行場配備に関する意見書(抜粋)
  平成24年9月28日 立川市議会議長 佐 藤 寿 宏


 立川市は、地元住民らの運動によって米軍立川基地の拡張を阻止し、また、基地を撤去させ発展してきた歴史を有していますが、今なお、米軍横田基地を離発着する米軍機の爆音に苦しめられている住民が少なくありません。その立場からも、オスプレイ配備問題は沖縄だけの問題として無視することはできません。…沖縄県内にこのように危険なオスプレイを配備することは、戦後67年も米軍基地の過重負担に苦しんでいる沖縄県民の「負担軽減」どころか県民が強く望んでいる「一日も早い危険性の除去」に逆行するものです。
 さらに、明らかになった全国6ルートの米軍の低空飛行訓練は、全国21県の市町村が対象となっており、…全国の住民を墜落の危険と恐怖にさらすもので、重大な危惧を抱かざるを得ません。
 もはや、オスプレイ配備に反対する10万人を越えた県民大会(9月9日)を成功させた沖縄県民・住民の意思は明確となっています。…よって、政府におかれましては、米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの普天間飛行場配備に関して、沖縄県議会、那覇市議会、宜野湾市議会意見書及び全国知事会緊急意見書をはじめとした地方自治体議会の意見書を尊重されるよう要望いたします。

 大飯原発の再稼働停止を求める意見書(抜粋)
  平成24年10月4日 藤沢市議会
  内閣総理大臣 経済産業大臣あて


 関西電力は,原発の再稼働に反対する多くの国民の声を無視し,平成24年7月に大飯原発3号機,4号機を相次いで再稼働させた。
 しかし,大飯原発3号機,4号機は,福島第一原発の事故調査結果から経済産業省原子力安全・保安院がまとめた30項目の安全対策について満足に果たせていない。しかも,関西電力の工程表では,免震事務棟は平成27年度までに建設する計画となっているほか,緊急時に蒸気を外部へ逃がすフィルター付きベント設備も平成27年度まで,防潮堤のかさ上げは平成25年度まで等,重要な安全策が後回しになっている。
 さらに,7月18日には,大飯原発3号機,4号機と1号機,2号機との間を走る破砕帯「F―6」について活断層の可能性が浮上し,原子力安全・保安院が関西電力に対し,再調査の要請をした。(略)このように安全性に大きな問題を抱えながらの再稼働は周辺自治体を初め,市民生活へ大きな不安をもたらしている。(略)
 以上のことから,再稼働をした大飯原発3号機,4号機については,安全策を先送りにし,危険を抱えて運転をしていること,活断層の危険性が指摘され,破砕帯の再調査を行うこと,原発がなくても電力不足を解消できる状況が明確となったことなどの理由により,停止をするべきであると考える。
 よって,政府におかれては,関西電力に対し,大飯原発の再稼働停止を要請するよう当市議会は強く要望する。以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
  【原子力災害対策指針と自治体防災計画】  
  
原発敷地内でないと避難できない?
 市民の命と健康を守らない原子力規制委「防災指針」は撤回を!
     
            無防備全国ネット事務局   12年65号4面~5面
 
   高被曝を強要する「防災指針」 

 10月31日に原子力規制委員会は原子力災害対策指針(「防災指針」)を決定した。これは、原子力産業の擁護、推進を最優先としているICRP(国際放射線防護委員会)及びIAEA(国際原子力機関)の思想とリスク基準を住民におしつけ、住民に内部被曝も含めた放射線被曝の受忍を強制するものである。市民の健康と命をはなから守る気がないこの「防災指針」は断じて認められない。直ちに撤回を求め、PAZ、UPZ圏内各自治体にもこの「防災指針」に基づく防災計画は作成するなということを求めていく必要がある。
 原子力防災計画の策定は、この「防災指針」を撤回させ、ICRP及びIAEAの基準を前提にするのではなく、ECRR(欧州放射線リスク委員会)をはじめとした原発推進でない知見を取り入れ、福島事故での防災・避難の実態を踏まえ、市民や自治体との議論を通じて新しい「防災指針」のもとで行われるべきである。

 防災指針」の問題点  経済優先、高すぎる避難基準

①基本的考え方にICRP及びIAEAの思想とリスク基準を持ってきており、経済性優先で健康と命をまもる視点にかけている。「防災指針」では、「IAEAやICRP等の国際基準に照らし」「ICRP等の勧告やIAEAの原則に則り…」と明示し、また、「放射線防護技術と社会的因子、経済的因子等の調和を図り…費用や社会的要因を考慮する」としている。
 
②現在と同様に、事故後の居住について年20mSvの避難基準を導入していること。「第4 原子力災害事後対策」の「(ⅱ) 現存被ばく状況における防護措置の考え方」で「1〜20mSv/年」と記載。これでは、また市民に無用の被曝を強いることになる。

③避難のためにあらかじめ定める基準(EALやOIL※註)がIAE A基準を基に7日間100mSvと高い数値に設定されようとしている。
 IAEA「GS‐R‐2※註」では「最初の7日間→100mSV(実効線量)で屋内退避、避難、除染」を定めており、「防災指針」には「…OIL等の具体的な基準については、今後、IAEAの国際基準を踏まえ…原子力規制委員会において検討を行う」としている。
  
 なお、この数値はフクシマ事故に比すると、原発敷地内か5キロ地点でしか避難できないほど高い数値になる。避難指示が遅れ住民は無用の高い被曝を強いられることになる。
 ・7日間100mSV→1時間当たり595μSV
 ・3・11の空間線量で、この595μSVを超えていたのは、福島第1原発の敷地内(11,900~1,200μSV)と大熊町大野(5キロ地点)の616μSVしかない。(飯館村(39キロ地点)は44.7μSV)

④30kmの重点防災対策区域(UPZ)は狭すぎる。福島原発事故では60km離れた飯舘村も避難区域となり、規制委員会が公表した被ばくシミュレーションでさえも、30km超えても7日間で100mSvに達する地点があるとしている。30kmに限ったUPZとの整合性がない。
※註

⑤30km外のプルーム(放射性雲)による被ばく対策は不明で、「プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域(PPA)」は「今後検討」と無視している。
 しかし、福島事故での飯館村の実例や岐阜県や滋賀県のシミュレーション調査では、「年間100ミリシーベルト以上の外部被ばくを引き起こす放射性物質が滋賀県の琵琶湖に降り注ぐ」(岐阜県)「琵琶湖を含む滋賀県北部の574平方キロで内部被曝量が100ミリシーベルト以上500ミリシーベルト未満」(滋賀県)とされており、30キロで区切ることは極めて非現実的である。
 PPAを「今後検討」とすることは、その地域を何もせず放置し、住民を危険にさらすことに他にならない。

⑥避難に伴う補償や「避難の権利」などについて何も考慮されていない。

   狙いは再稼働のクリア。策定ありきの「防災計画」にNOを!
 

 規制委は、この「防災指針」に基づいて30キロ圏UPZ自治体に来年3月までに「防災計画」を策定させるとし、田中委員長は防災計画策定を再稼働の前提条件とした。
 「防災指針」に基づいて、自治体が防災計画を策定しようにも、30キロ圏は都道府県・市町村が入り組み、避難計画は食糧・飲料水・住居・教育・医療等々含めて一自治体で完結するものではない。また、対策のための予算や国と自治体の分担も未定で、今後総務省消防庁を中心にモデルマニュアルを11月中に策定するという。

 しかし、国民保護計画では、基本マニュアルは各自治体とも国のマニュアル丸写しでとりあえず作成したが、避難計画に至っては、どの自治体も要援護者の避難計画さえも策定できず棚晒しにしたまま、国(消防庁)はその指導すら行っていないのが現状である。
 自らの自治体内での一部の避難計画さえ策定できないのに、30キロ圏の全国480万人もの(関西では合計125万人)避難計画など自治体で策定のしようもないことは明白である。

 「避難基準の「七日間で一〇〇ミリシーベルト」は、一般人の年間被ばく限度の「年間一ミリシーベルト」の百年分を、たった一週間で浴びる高い数値。立地自治体が、これほど高い値を頼りに柔軟な防災計画を立てられるのか疑問。」(東京新聞10/24)である。

 公助2割、自助8割を強調(国民保護モデル計画)した自助努力に基づき、ICRP及びIAEAの基準のみ明確にし、肝心の避難計画は後回しの防災計画とは言えない杜撰な計画をとりあえず策定させて、再稼働のための要件が整ったとしたいのであろう。

 しかし、問題点だらけのこの「防災指針」では、自治体担当部局は高被曝を強いる杜撰な「防災計画」は体裁をととのえられても、市民の命を守る「防災計画」の策定はできない。

   最大の防災計画は原発の廃止

 最大の原子力防災は、「ただちに全原発の廃炉」である。(もちろん、廃炉に至る過程での原子炉の解体、使用済核燃料や高レベル放射性廃棄物の管理は必要でそのための原子力防災体制は必要。)
 「防災指針」の問題点を指摘し、自治体を追及し、規制委員会の「防災指針」では計画は策定できない、の声をあげさせ撤回を迫ろう!自治体に「防災指針」に基づく「防災計画」を策定させない取り組みを行おう。


註:EAL…外的事象の発生に着目しながら、原子力施設の状態等で表される「緊急活動レベル」

OIL…放射性物質の濃度等、環境において計測可能な値で表される「運用上の介入レベル」
GS‐R‐2…国際原子力機関による安全基準シリーズNO. GS-R-2「原子力又は放射線の緊急事態に対する準備と対応 安全要件」のこと。この中で、「緊急防護措置と他の対応措置に対する包括的判断基準」として「最初の7日間で50mSV(甲状腺の線量当量)→よう素甲状腺ブロッキング、最初の7日間→100mSV(実効線量)で屋内退避、避難、除染」(P11)を定めている。

UPZ対象自治体 全国45から135自治体へ拡大 人口71万人から480万人

関西のPAZ(予防的防護措置を準備する区域 5キロ圏) 敦賀市、美浜町、おおい町、高浜町、舞鶴市 約18万8千人

関西のUPZ(緊急時防護措置を準備する区域 30キロ圏)福井市、越前市、越前町、鯖江市、池田町、南越前町、若狭町、小浜市、岐阜県揖斐川町、長浜市、高島市、京都府伊根町、宮津市、綾部市、丹波町、南丹市、福知山市、京都市左京区 約106万2千人

関西のPPA(プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域)※これを従前のPPZ50キロ圏と仮定すると 坂井市、永平寺町、勝山町、大野市、岐阜県本巣市、米原市、大津市、京丹後市、与謝野町、亀岡市、京都市(右京区、北区)、豊岡市、丹波市、篠山市 約128万人 
  平和への権利 世界キャンペーン ⑧
   ジュネーヴ州民の挑戦 ― 憲法に平和への権利を
     前田 朗(東京造形大学教授・無防備地域宣言運動全国ネットワーク共同代表) 
                                     12年65号6面~
7面
  
   バルビー氏を覚えていますか

 スイスの平和運動家クリストフ・バルビーを覚えていますか。 

 長髪、長髭のバルビーです。二〇〇五年七月に横浜と京都で「軍隊のない国家」講演。二〇〇八年五月の「9条世界会議」にも参加し、川崎無防備運動でも講演しました。「軍縮を求める協会」コーディネータ、「軍隊のないスイス」運動の一員です。スイス中部フレンドルの住人ですが、今、ジュネーヴ州憲法改正のために活動しています。
 
 スイス最西端の小都市ジュネーヴには、国連欧州本部、人権高等弁務官事務所、難民高等弁務官事務所、世界保健機関、国際労働機関、赤十字国際委員会などが集中するため、すでに世界的なピース・ゾーンとなっています。既に紹介したように、国連欧州本部で開催される国連人権理事会で、平和への権利国連宣言を作成するための議論が続いています。

 人権理事会諮問委員会は宣言草案をまとめ、本年六月の人権理事会は、宣言の議論をするために作業部会設置を決め、二〇一三年に本格的審議を行うことにしました。そこでもバルビーは、平和への権利を求めるロビー活動をしています。
 
   州憲法に平和への権利盛込む取り組み始まる

 他方、二〇〇八年二月、ジュネーヴ州憲法改正作業が始まりました。現行憲法は一八四七年のものだそうで、二一世紀になっての全面見直しです。平和運動団体は、憲法に平和への権利を盛り込む取り組みを始めました。国連の作業と並行して、ジュネーヴ州レベルでも平和への権利の議論が始まったのです。
 スイスは連邦国家なので、連邦憲法とは別に各州ごとに憲法があります。もちろん州(地方)の話であって、スイス連邦軍の存在とは別のレベルです。
 
 女性団体連合「平和のための女性たち」、宗教者「ジュネーヴ・クェーカーズ」、平和団体「平和の蜘蛛」、そして「ジュネーヴ結社連合」が活動を始め、二〇〇九年初頭にネットワーク「平和の極」を組織しました。平和の極は、憲法に平和を位置づけるために改正提案を行い、その説明書も作成しました。執筆したのが、バルビーです。彼らの提案は「提案一〇/五七」として受理されて、議論のたたき台となっています。

   改正提案全文

 憲法改正提案第一〇/五七号(憲法制定会議への提案)

Ⅰ 前文 ジュネーヴ人民は、平和と安全に基づく人道の将来が、個人及びすべての者の発展に必要であることを認識して、この憲法を採択する。この憲法は協力、相互尊重及び個人の尊厳を奨励する。

Ⅱ 基本的権利 すべての人間は、平和のうちに生存し、暴力と恐怖から自由であり、生存に十分な手段を享受する不可侵の権利を有する。

Ⅲ 政府の役割
a 州は、その活動の諸原則並びに個人及び人民の基本権として、平和と正義を促進する。
b 州の任務

(1) 平和と人権の教育:基礎教育は、調和のとれた社会のために、平和の文化を促進すべく準備される。平和と人権の教育は、公教育及び私教育の不可分の一部である。州は、平和と人権の研究を支援する。

(2) 非暴力、実力の行使:州は、制度的なものであれ個人の間のものであれ、すべての形態の暴力を予防し、非難する。人民の模範及び権威として、警察は不必要な実力の行使を避け、予防的に、節度を持って行動する。実力の行使は州の特権であり、すべての行使は報告事項とされるべきである。

(3) 紛争予防:州は、その領土内及び共和国の外の紛争予防を支援する。州は、和解及び平和的紛争解決に活動する公的団体やヴォランタリー団体を支援する。

(4) 国際連帯:他の公当局や世界との関係で、政府は人権を擁護しつつ、平和、協力、自然環境の尊重、人民間の連帯、公正な貿易、貧困撲滅、非差別に貢献する価値を支持し、促進する。

(5) 社会サービス:州は、社会サービスへの人々のヴォランタリー参加を促進し、報償することにより、社会的結合と市民社会を促進する。ヴォランティアは、もし選択すれば、紛争管理の訓練を受ける。ヴォランティアは外国での平和維持任務に参加できる。

(6) 人間の安全保障:州は、軍縮に向けたステップを支援する。州は住民の安全を確保するために非軍事的手段を開発し、実施する。

   平和を人権にする ~ 議論はこれから

 提案説明書で、バルビーは「平和を人権にする」と強調します。
世界人権宣言、欧州人権条約、国際人権規約の諸規定を発展させて、平和的生存権を掲げています。

   安全保障は連邦の権限? 平和への権利規定は可能

 安全保障や軍事問題はスイス連邦の権限であり、州には権限がないとの批判に対して、バルビーは、州は連邦に対する義務に違反することなく平和を人権とすることができると言います。日本国憲法9条のような国家の戦争放棄規定をジュネーヴ州憲法に入れることはできませんが、平和への権利規定なら可能なはずです。

 平和を人権にすることは、個人の権利としての平和的生存権を認めることであり、州はそれを妨げてはならないのです。これまでも右の(4)国際連帯や(5)社会サービスの実例があり、認められてきました。(6)に明示した軍縮は連邦の権限ですが、州からの提言は可能ですし、人間の安全保障は国連レベルで何度も共通認識として確認されてきました。
 議会には反対派もいますし、改正作業の行方は定かではありませんが、平和への権利をさまざまなレベルで取り入れる運動として参考になります。これからの議論に注目したいところです。

   ジュネーヴ州の平和憲法づくりに影響与えた無防備運動

 ジュネーヴ州における挑戦は無防備運動と共通の側面を持っています。バルビーは来日時に「無防備地域宣言運動全国ネットワーク」メンバーと交流を深めてきましたし、「無防備運動のような平和運動をスイスでもできるかどうか検討したい」と語っていました。

 つまり、無防備運動がジュネーヴ州の平和憲法づくりに影響を与えていると言えます。
 
 国連人権理事会における平和への権利宣言づくりにも日本NGOからの情報発信が続いています。9条世界会議が提言したように、平和主義と平和的生存権を世界に広げることが重要です。
  【追悼】国際人道法の発展に尽くした藤田久一さんの死を悼む
                                          12年65号8面         
 
 高名な国際人道法学者で、元世界法学会理事長であった関西大学名誉教授の藤田久一(さふじた・ひさかず75歳)さんが11月7日亡くなられました。藤田さんは「戦争犯罪とは何か」(岩波新書)「新版国際人道法」(有信堂高文社)「軍縮の国際法』(日本評論社)などを著し、国際人道法の発展普及に努めてこられました。

 無防備地域宣言運動でも、「基地の撤去」を掲げた宇治市の直接請求直後の07年6月の第4回全国総会で講演をしていただき、激励を受けて、その年の秋に取り組み、成功させた札幌市直接請求運動の弾みをつけました。
 ここに深く哀悼の意を表し、国際人道法を活かし戦争をなくす地域をつくる運動を進めていくことを表明し追悼にかえます。
 以下、無防備全国総会での講演から発言の抜粋です。

▼現代国際社会は国連憲章で戦争(武力による威嚇または行使)は禁止されている。国際秩序の基本的原則である。イラク戦争はこれに反する。

▼自衛隊がイラクに出て行ったイラク特措法の中で非戦闘地域であり国際人道法は適用されないとしているが、日本政府がそう言っているだけのこと。国際法はイラクの自衛隊の活動に適用される。自衛隊は戦闘員とみなされる。

▼教科書の沖縄戦での集団自決強制記述削除はおかしい。削除する理由として、上官は強制しなかったとしているが、…手榴弾を渡すことは沖縄の住民を戦闘員に仕立て上げること。手榴弾は戦闘員資格の条件(武器を携行)に該当。だからこれは強制的に軍の構成員にしてしまっている。その責任は、上官にある。…最高裁判決に「戦争による被害を受忍する義務がある」という見方があるが、違法な軍事行動であれば賠償責任は出てくる。

▼無防備地域宣言は法的な議論はいろいろあるが、先ほどの沖縄の例から言うと、軍事基地、軍事状況から避けるような地帯をつくるというのは、運動レベルとして自治体が無防備地域宣言をする、条例をつくる、あるいは政府にそれを要請するということは、国際人道法上、違法な内容ではなく、良いことである。