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2006年01月22日

沖縄県国民保護計画案を考える

2006年1月19日(木)  八重山毎日新聞

県国民保護計画案を考える  (上)
「避難可能か」の議論欠く
有識者の目には“机上の空論”

 他国からの武力攻撃に備え、住民の避難・救援措置を定めた沖縄県国民保護計画案に対する住民意見の受け付けが今月二十五日に迫った。計画は住民の生命、財産にかかわる重要な問題をはらむ。国境に接する島々、広大な米軍基地、多くの住民が犠牲になった沖縄戦の体験など、特殊事情を抱える沖縄での住民避難のあり方はどうあるべきか。そもそも避難が可能かどうか。全文に目を通した琉球大学法科大学院助教授の高作正博氏(憲法)、無防備地域宣言・沖縄ネットワーク事務局長の西岡信之氏とともに考えてみた。(那覇支局・比嘉盛友記者)

 ■住民避難■

 「国民保護の計画を策定する極めて重要な文書であるが、多くの問題点を含むと言わざるを得ない」という高作氏はまず「島しょ県という特殊事情をどこまで考慮しているか」と疑問を呈す。
 離島での住民避難(素案百三十ページ)について例えば八重山では、島内、島外(石垣島が拠点)、県外というパターンになるが、どういう事態にどういう避難が必要となるかなどについては「事態の推移に応じ」とのみ記されている。
 高作氏は避難そのものについて「そもそもそれが物理的に可能なのかどうかの議論が欠けている。その議論がないままにいくら計画を策定しても、国民保護には結びつかないと言わざるを得ない」と断じる。
 西岡氏もこの点は同じ。自動車保有台数や道路延長距離などの分析によっても「緊急時に一斉に住民が避難することは本当に可能なのか、はなはだ疑問」「米軍と自衛隊の作戦行動を優先する中で住民避難ができるとは考えられない」と言い、「机上の空論」と手厳しい。

 ■住民の協力■

 素案は国民(住民)に協力を要請できる内容(概要七ページ)として▽避難住民の誘導、救援▽消火活動、負傷者の搬送、被災者の救助その他の武力攻撃災害への対処に関する措置▽避難に関する訓練への参加-などを挙げた。
 概要版では住民が協力の要請に応じるか否かは「任意とし、義務とはしない」と明記しているが、素案本文には「国民は、その自発的な意志により、必要な協力をするよう努めるものとする」(三ページ)との記述にとどまった。
 この点について西岡氏は「任意の規程や義務化の排除という視点が正式文書の県案では削除されている」と指摘した上で「強制されないことを明記すべきだ」と主張。
例えば避難訓練の際、「拒否した場合は雇用関係等で差別・選別されないか」との懸念があるからだ、実際、国旗国歌法の制定の際には政府は強制しないとしていたが、東京都などでは事実上強制化され、従わない教員が処分されるケースが続出した。

【県国民保護計画素案】

 国の都道府県モデル計画に沿って作成。▽総論▽平素からの備えや予防▽武力攻撃事態等への対処▽復旧等▽緊急対処事態への対処-の五編百二十一ページ。対象とする事態は▽武力攻撃事態の四類型(着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、弾道ミサイル攻撃、航空攻撃)▽緊急対処事態の四類型(石油コンビナート爆破、大規模集客施設爆破、サリンなど化学剤の大量散布、航空機による自爆テロなど)。素案は県防災危機管理課のホームページや八重山行政情報センター(八重山支庁一階)などで閲覧できる。(つづく)

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2006年1月20日(金)  八重山毎日新聞

県国民保護計画案を考える  (下)
期待できぬ米軍との連携
沖縄の特殊性 素案に盛り込めず

 ■国際人道法■

 素案は「県は国民保護措置を実施するに当たっては、国際的な武力紛争において適用される国際人道法の的確な実施を確保する」(四ページ)と明記、国際人道法のジュネーブ諸条約および第一追加議定書の規定を認めている(百十ページ)。
 「国際人道法の意義を認めているならば」と前置きした上で西岡信之氏は言う。
「同じ条文の中の五十八条の『攻撃の影響に対する予防措置』と五十九条の『無防備地域宣言』を国民保護計画の中で採用することを否定する理由はない」。
 五十八条は人口密集地域に軍事目標の設置を避けることや住民を軍事目標から移動させるよう努めることをうたい、五十九条は武力や敵対行為がないことを宣言した地区への攻撃を禁止している。追加議定書は日本でも二〇〇四年に批准され、〇五年二月から効力が発生した。
 西岡氏は「地元住民の安全を確保する最終的な責任は政府ではなく地元自治体にあることは、国民保護計画を全国の市町村に策定させることからも明らか」として追加議定書に基づく住民保護規定を県・市町村計画に盛り込むよう求めている。

 ■米軍との関係■

 在沖米軍との連携のあり方について素案は「連携体制の整備に努めるものとする」と記述するのみ。「関係省庁において、その対応を協議しており、一定の整理がついた段階において、今後、情報提供を行う」(二十四、二十七、八十ページ)との注釈がつく。
 「すなわち、米軍との連携が可能かどうかはわからない。そうであるとすれば、米軍は米軍内の被害の把握や救援に必死となり、県民保護に対する協力を期待することはできないのではないかという疑問を払しょくすることはできない」と高作正博氏。
 西岡氏も「米軍との行動と住民避難の調整をどのように行うか明確になっていない。結論が出ていない段階で計画を策定すること自体無理がある」と批判する。
 両氏とも二〇〇四年八月の米軍ヘリ沖縄国際大学墜落事故を例に「米軍は自らの行動のみ優先させ、警察や消防署はじめ地元自治体、大学側の意見さえも聞かなかった」(西岡氏)、「それにもかかわらず米軍との連携が機能しうることを前提に、県の保護計画を策定しているとすれば、その前提が誤りといえるのではないか」(高作氏)。

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 沖縄の特殊性は素案にどう盛り込まれたのだろうか。島しょ性については「離島における武力攻撃事態等への対応について」(第三編第一三章)で章立てしたが、在沖米軍との連携体制は未整備のまま。さらに沖縄戦の歴史的背景からくる「軍隊に対する拒否反応もある」県民感情についての記述はみられない。
 西岡氏は「沖縄戦の悲惨な経験には触れられてない」「素案の九割以上が消防庁作成の都道府県モデル計画と同じ」と国によるトップダウン方式だと指摘し、沖縄ならではの平和施策を明記したり米軍基地の撤去・整理・縮小を提起したりするなど独自性を打ち出すよう注文をつけた。
 高作氏はパブリックコメント(〇五年十二月二十六日―〇六年一月二十五日)に対する県の姿勢に疑問符をつける。「わずか一ケ月。しかも年末年始をはさんでの時期設定。これでは県民への啓発という意欲を全く欠いたものと言わざるを得ない」とバッサリ。「計画策定段階で広く県民の理解を得る、あるいは県民の意見を吸い上げるという方針を立てないと、計画の実施はうまく機能しえないだろう」。(那覇支局・比嘉盛友記者)

投稿者 全国ネット : 2006年01月22日 20:24

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