住民の安全と財産を守る自治体の責務を貫いた
                         箕面市長意見書

     
                     2007.2.25 無防備地域宣言運動全国ネットワーク事務局 

         (箕面市長意見書の意義)

 大阪府箕面市の藤沢純一市長は、国立市に続いて全国で2番目に無防備平和条例(条例案の名称は「箕面市平和のまち条例」)について賛成意見書を二月二〇日の定例議会に提出しました。これまで、国立市を除く全ての自治体首長が、自治体の責務を放棄し国の言いなりになっているなかで、藤沢市長の決断は特筆すべきものです。

 市長意見書の要点は「…箕面市において平和について具体的に保障するための条例を制定することは、地方自治の本旨である団体自治を貫く観点からも意義あることだと思います。また、市民の安全・財産を守ることは、地方自治体の最も基本的な仕事です。…平和的生存権について、日本国憲法の前文で規定されているので不要との意見もありますが、市民の安全・生命を守り、平和のまちづくりを進めるための最も根本的な考え方であり、条例を制定するとすれば重要な規定である。…赤十字国際委員会コンメンタールにより地方自治体において宣言できる可能性があるとするならば、その可能性について研究する必要があると考えます。その上に立って、市民の生命・財産を守ることが地方自治体の事務であることに照らして、ジュネーブ条約第一追加議定書第59条に掲げる事態となったときに無防備地区宣言を行なうことを条例で規定することは可能であると考えます。」です。

 箕面市長意見書の意義は
 第一に、市民の安全・生命を守り、平和のまち0づくりを進めるために、無防備地域宣言を活用すべきとして、自治体の責務を明確にしている点にあります。
 第二に、平和的生存権は憲法にあるから必要ないという批判や自治体は無防備地域宣言できないという、これまでの論点について、市長意見書で明確に反論しています。市長意見書に盛り込んだという点では、国立にもないもので、初めてのものと言えます。
 第三に、箕面市は国民保護計画のパブリックコメントに対する回答で無防備地域宣言について「地方公共団体が宣言できない」という国の見解を示しているにも関わらず、市長意見書では実質可能との立場を示していることです。市長は「国民保護計画や無防備地区宣言などあらゆる施策の活用を検討していくことが必要」と、自治体の責務を貫く観点から「(宣言の)可能性について研究する必要がある」としています。

 総じて箕面市長賛成意見書は、国民保護計画を策定していない国立市の場合とは違い、国民保護計画を策定し、かつパプリックコメントで無防備地域宣言を否定している自治体においても、住民の平和と安全・財産を守る自治体の責務を明確にし、貫くなら条例制定の選択ができるという、極めて大きな意義をもつものです。これによれば、国民保護法や武力攻撃事態法、はては自衛隊法と抵触するという根拠のない論拠を、国民保護計画を策定した自治体から実態において論破したといえます。今後のどの自治体でも、自治体の責務を明確にすれば条例制定は可能ということを示したのです。

                                   (箕面市長意見書全文)

 今回、法定署名数2,035人をはるかに上回る有効署名数4,264人の署名を集められた直接請求よる「箕面市平和のまち条例」の制定を求められましたので、地方自治法第74条第3項の規定に基づき、意見を述べます。
 市民の条例制定を求める直接請求は、箕面市においては実に20年以上なかったことであり、市民の平和に対する思い、市政に対する市民の参加意識、民主主義を地域で実現しようとする熱意の表れと心から敬意を表します。
 これまで、箕面市の平和に関する姿勢を明らかにしたものとして、昭和60年に市議会で議決をいただきました「箕面市非核平和都市宣言」がありますが、その宣言の趣旨に基づき具体的施策を推進するための条例はもっておりません。私たち日本国民は、憲法前文で「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を愛し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と国際社会の中で平和を維持し、発展させることを決意しました。その意味で、箕面市において平和について具体的に保障するための条例を制定することは、地方自治の本旨である団体自治を貫く観点からも意義あることだと思います。また、市民の安全・生命を守ることは、地方自治体の最も基本的な仕事です。
 さらに、近代における戦争の様相が大きく変わってきていることにも留意しなければなりません。第一次世界大戦までは、戦死者の5%が一般市民でした。ところが第二次世界大戦では一般市民の戦死者が48%に増大し、朝鮮戦争では84%、ベトナム戦争では95%と、圧倒的に犠牲者は一般市民です。これは、現在紛争が継続しているイラクにおいても同様の状態です。つまり、戦争になれば市民の生命が大きく脅かされます。もちろん第一義的には戦争を起こさないための国際社会の取り組みが求められますが、不幸にも戦争や武力攻撃事態になったときは、地域の住民を守るために私たち地方自治体も大きな役割を担わなければなりません。
  そう考えるとき、無防備地区の宣言が私たちのまちで実施が可能であるならば、その活用を真剣に考えるべきだと思います。このような立場で、本条例案を検討させていただいた点について、以下に述べます。

1.平和的生存権について、日本国憲法の前文で規定されているので不要との意見もありますが、市民の安全・生命を守り、平和のまちづくりを進めるための最も根本的な考え方であり、条例を制定するとすれば重要な規定であると考えます。
2.国民保護計画との関連については、有事関連法制の一環として、戦争に協力するための計画として国民保護計画の策定そのものに反対する意見があります。しかし、冒頭に述べたとおり、市民の生命・財産を守るため必要な施策を実施することが地方自治体の最も基本的な責務であり、国民保護計画や無防備地区宣言などあらゆる施策の活用を検討していくことが必要です。その観点から、本市では国民保護計画を策定し、今定例会に報告しています。
3.「1949年8月12日のジュネーブ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書T)」(以下「ジュネーブ条約第一追加議定書」という。)に規定される無防備地区の宣言に関しては、地方自治体が宣言の主体となることができるのか、併せて条例で規定できるのかが論点となっています。
  国は、「ジュネーブ条約第一追加議定書に規定される無防備地域の宣言は、当該地域の防衛に責任を有する当局、すなわち国において行われるべきものであり、地方公共団体が宣言を行うことはできない」との見解を示しています。「箕面市国民保護計画(素案)」に対するパブリックコメントにおいても、国の見解を示しています。
  一方で、赤十字国際委員会コンメンタールにおいては、政府が困難な状況にあることや軍当局との合意があることなど、一定の条件の下に市長や知事といった地方の文民当局によって宣言することができるとされています。赤十字国際委員会コンメンタールにより地方自治体において宣言できる可能性があるとするならば、その可能性について研究する必要があると考えます。その上に立って、市民の生命・財産を守ることが地方自治体の事務であることに照らして、ジュネーブ条約第一追加議定書第59条に掲げる事態となったときに無防備地区宣言を行うことを条例で規定することは可能であると考えます。 以上、本条例案に対する基本的な認識を述べましたが、条例として修正し、及び整理すべきと考えられる事項について意見を述べます。

1 第4条に規定する無防備地区について、地方自治体による宣言が可能であるとしても、宣言を行なうべき時期および条件が明示されておらず、これらの明文化が必要であること。
2 第5条第2項に規定する平和推進委員会について、市の附属機関を想定していると思われるが、法的な位置付け、役割、権限等について整理の上、所要の修正が必要であること。
3 第6条に規定する平和予算の計上については、第3条に事業実施が規定されていることに加え、市長の予算編成権及び議会の予算審議権を制約することから、削除又は努力規定に修正すること。
4 見出しと条番号の関係、初字の位置その他条例の形式については、一般的な現行の法令形式に整理すること。また、「箕面市非核平和都市宣言」その他固有名詞の引用は正確に行い、全体を通じて法令用語を用い、本市における他の例規との表現の整合性に留意して所要の修正を行うこと。

   最後に、恒久平和は人類共通の願いであり、市民の平和と安全を確保することは本市の重要な責務です。本市では、日本国憲法の平和主義の理念や箕面市非核平和都市宣言の趣旨に基づき、「平和」をはじめとして「人権」、「国際理解」などを総合的に捉えた諸事業を推進してきました。今後とも平和の実現に向けて私たちができることを真摯に議論し、行動していくことが求められており、広く人々の中に平和の砦を築くことができるよう、様々な事業を推進していきたいと考えています。 
   条例制定の直接請求に寄せられた多くの市民の思いを受け止め、平和のまちを実現していくため、この条例案について慎重に審議されることを切にお願いし、私の意見とします。 

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